Youtube副業：僕を現実に引き戻し、そして火をつけた
- 読書
- 2025年6月21日
こんにちは、風森です！
日本の会社で働きながら、多くの同僚と同じように、僕もいつも考えていました。「この時代、会社での仕事以外に、どうすれば自分の価値を最大化できるだろう？」と。「個人ブランディング」や「コンテンツクリエイター」といった言葉が、成長したいと願う僕たちの心をくすぐります。そしてYouTubeは、多くの人にとって、その夢を叶える「約束の地」のように見えました。
そんな憧れを胸に、最近、YouTube運営に関するベストセラーを読み終えました。正直なところ、最後のページを閉じた瞬間、想像していたような「なるほど！」という興奮はありませんでした。むしろ、頭から冷や水を浴びせられたように、一瞬で現実に引き戻されたのです。
でも不思議なことに、その冷静さの中で、今までにないほどの手応えと興奮を感じている自分に気づきました。なぜならその本は、「好きを仕事に」という甘い幻想を容赦なく打ち砕く代わりに、無骨だけれど、非常にリアルで鮮明な「ビジネスの地図」を僕に手渡してくれたからです。
一、「趣味の延長」という時代の終わり
僕たちは「YouTuberになるには、まず情熱だ」と考えがちです。それは間違いではありません。しかし、この本は、「継続」という言葉の重みと、その本当の意味を僕たちがいかに軽く見ていたかを教えてくれました。
特に印象的だったのが、 「動画100本が、ようやくスタートラインだ」 という一文です。
この数字は、まるで冷たいフィルターのように、僕の甘い幻想を99%ふるい落としました。これは「情熱さえあれば成功できる」という優しいエールではありません。「最低でも100本の動画を投下する覚悟がなければ、あなたはこのゲームの参加資格すらないかもしれない」という、シビアなビジネスの通告です。
これではっきり理解しました。僕たちがいる「クリエイターエコノミー」は、もはや数年前のような、素人が情熱だけで一旗揚げられた牧歌的な時代ではないのです。そこは高度に専門化し、競争が白熱する一つの「産業」と化しています。ここでの成功は、偶然の産物ではなく、緻密な戦略に裏打ちされた必然である、と。この本は、その事実から目を逸らさず、僕たちに「起業家」の視点を持つことを強いるのです。
二、「計算高いアーティスト」という新しいクリエイター像
この本が僕の価値観を最も揺さぶったのは、「クリエイター」という存在を再定義した点です。「インスピレーション」や「情熱」といった言葉はほとんど登場せず、代わりに「データ」「戦略」「最適化」といった言葉が全編を貫きます。
例えば、「経験が浅くても、『プロ』としての自覚を持つべきだ」 と説きます。
これは、僕たちが求める「リアルな感じ」とは逆行するように思えるかもしれません。もっと自然体で、ありのままの自分を見せてくれるクリエイターの方が好感を持てるのでは？と。しかし、この本が言う「プロ意識」とは、嘘をつくことではありません。視聴者の時間を預かっているという責任を持つことです。あなたの背景、話し方、コンテンツの構成、そのすべてが、最高の視聴体験を提供するために、注意深くデザインされるべき「製品」なのだ、と。
それはまるで、現代のビジネスシーンで求められる「T型人材」のようです。つまり、これからのクリエイターは、良質なコンテンツを生み出す「アーティスト」であると同時に、クリック率や視聴維持率を分析し、SEOを最適化する「データアナリスト」でなければならない。
この「計算高いアーティスト」こそ、未来のクリエイターの生存戦略なのかもしれません。それはもはや単なる自己表現ではなく、ユーザーを第一に考える「プロダクト思考」そのものです。
三、最も耳が痛く、最も価値あるアドバイス
この本の中で、最も不快に感じ、しかし後から深く納得させられた比喩がこれでした。
「チャンネルはコンビニの棚だ。魅力的な売れ筋商品だけを並べるべきだ」
これはつまり、再生回数が少なく、反応の薄い「不良在庫」は、定期的に非公開にすべきだ、ということです。
クリエイターの「初心」に対する、真正面からの挑戦状です。「自分が投稿した動画は、どれも我が子のようなものではないか。成績が悪いからといって、見捨てるなんてできるか？」と。
しかし、冷静になってみると、その「冷酷さ」の裏にあるビジネスロジックが理解できました。質の低いコンテンツが大量に並んだチャンネルは、全体の専門性を薄め、アルゴリズムからの「信頼」を損なう原因にもなります。ビジネスの視点で見れば、これほど効率的で合理的な判断はありません。
この視点は、僕をより深い問いへと導きました。「今日のインターネットにおいて、『ありのままの自分』と『成功』をどう両立させるべきか？」と。この本が出した答えは、「成功するビジネスとは、それ自体が緻密にデザインされた『リアル』なのだ」 ということでした。
最後に
この本を読んで僕が一番感じたのは、その価値が「YouTubeチャンネルの運営方法」というテーマを遥かに超えている、ということです。本質的には、「すべてが数値化されるデジタル世界で、一個人が、いかにして自分自身を成功する『マイクロカンパニー』へと育て上げるか」を説いています。
それは動画制作のテクニックだけでなく、現代を生きる僕たち全員に応用可能な、根源的な思考法です。どう需要を見抜き、どうプロダクトを磨き、どうデータを分析し、どう改善を繰り返すか。
だから、もしあなたが単に楽しみとしてYouTubeをやりたいなら、この本は期待外れかもしれません。でも、もしあなたが僕と同じように、自分の可能性を信じ、自分の知識や情熱を確かな影響力に変えたいと本気で願うなら。この本が浴びせる「冷や水」は、あなたの心にある火を本気で燃え上がらせるために、きっと必要なものだと思います。
